見えないバトン

見えないバトン

「似合う?」

同学達と顔を合わせ始まった高校三年生の一学期、青から赤へと変わったネクタイの色に私達は心を躍らせていた。

昨年も迎えたはずの入学式。今年は何故だか違って見えた。それと同時に自身の入学当時を鮮明に思い出した。初めての寮生活に初めてのテーブルマナー。毎日忙しく進んでいく時にしがみつくので頭がいっぱいだった。自分がどのようであるのかさえ、自分の心を覗く余裕もなかった。

そうして仲間と過ごし、たどりついた今。私達は全てが最後となる最高学年になっていた。文化祭も体育祭も来年はこうしよう、次はこんなのがいいと案を出しあっていた去年。次はなく、今年で何もかもが最後。今までの高校三年生が引っぱってきてくれた学校行事から何から全て、見えないバトンはもう既に渡されていたのだ。

最後だから頑張る、ではなく、いつもの私達高校三年生の気合とプラスアルファで「ラスト」と言った言葉を背負い、学校全体を引っぱりそして支えられる学年になりたいと思った。最高学年になった今でも、こう考えると今という時に追いつくのに必死でいる自分がいる。立ち止まって振り返るのではなく、今は「今」をしっかり見つめ、少しでも前に進んでみれば、きっとゴールにたどり着くだろう。そして、私達も「縁の下の力持ち」と呼ばれる最高学年になれるのではないかと思う。バトンを受けとり、今。がんばろうと思った。

(高等部3年生 女子)