H2・古文・授業レポート①

高校2年生の古典では、今学期「春はあけぼの〜」でお馴染みの『枕草子』を扱いました。古来より、日本には四季があり、人々は食べ物や行事、そして天候や植物の変化からなる季節の移ろいを楽しんできました。春夏秋冬の「をかし」を取り集めた「春はあけぼの」や、嵐の翌日の趣深い秋の情景を描いた「野分のまたの日」からは、清少納言の優れた観察力と豊かな感性がうかがえます。加えて、文中に散りばめられた様々な「うつくしさ」を形容する言葉からは、人間の感覚に寄り添う繊細な言葉や表現が古代の日本に根づいていたことを確認することができました。

授業の取り組みでは、四季折々の「をかし」をふまえて、生徒たちが「をかし」や「あはれ」と感じる物事を集めた「令和の枕草子」を作成し、鑑賞しました。住んでいる場所や実際の体験に基づいた生き生きとした表現に、共感する声も多く集まりました。今回は春と夏・秋と冬の2回に分けて、「令和の枕草子」より、いくつかの例をご紹介します。

〈春〉

春は清流。花見の中花に気を取られ、ふとした時の川の音に春を感ずる。
春はお花見。地元夙川桜の名所、桜のトンネルに桜の絨毯、桃色の川に足つけながらお団子食べるのいとをかし。
春は桜。辺りがほのかな桃色に包まれて、花の香とともに小鳥のさえずりが聞こえてくるのは良い。また、出会いと別れが入り混じり、色々な感情で心が満たされるころに見つける日常のささやかな幸せにも心が躍る。
春は入学式。新入生の緊張が何となく伝わってくること、いとをかし。きっともうすぐ慣れるよ。
春は昼。菜の花畑で所々に蝶が舞っているのは良い。また、耳をすますと鶯が遠くで鳴いているのも春を感じさせていて良い。

〈夏〉

夏は縁側。蝉の鳴き声を聞きながらそこで寝るのも心地よい。空をほおけ眺めるのも良い。
夏は水泳。学校で泳いだあと喋りながら帰り道を友達と歩く。かすかに吹き抜ける風で塩素の匂いを感じるのがよい。
夏はプール。小学校の地獄のシャワー。プールの後の国語の授業は塩素の匂いに包まれて、みんなうとうと。私もうとうと。

夏はスイカ。暑い日に食べるキンキンに冷えたスイカがよい。みんなでスイカ割りをするのもよい。最後に種を植えてみるのも面白い。
夏は麦茶。家に帰って、熱くなった体で飲む麦茶おいしい。
夏は花火。浴衣を着て、静かで暗い空の上に明るい花がバンッと咲くのがよい。また、何がが過ぎ去ったかのような寂しさもまた趣がある。
夏はかき氷。田舎の雑で安い物はどこか懐かしい。シロップが溜まる前に食べるのが良い。

夏は昼。鄙で陽の日を浴びながら、揺らぐ景色をぼーっと見つめる。一瞬何も聞こえなくなるような時、暑さをも忘れる一瞬が良い。
夏は夕方。眩しかった太陽が美しい色で沈んでいく。心地良い風が吹いて、虫の大合唱が聞こえ始める。いつも明るい性格の夏が夕方になると切ない顔をするギャップがいい。
夏は夜中。暗闇の中での虫取りが良い。自分が持つ懐中電灯に照らされて一部分だけ光っているカブトムシ。虫の鳴き声だけが聞こえて、こっちにいるんじゃないかとワクワクする。