立教英国学院

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立教生が綴る英国寮生活

春暁


 閉めきったカーテンの下からわき出てくる陽の光は、うす暗い部屋を照らす。段々と家具が現れ色が足されていくのを見ていると、昨日とは別の世界で目覚めてしまったような、知らない人になったような気持ちになる。
僕は春のこの時間が好きだ。夏でも秋でも冬でもいけない。春の朝が好きだ。

 よくマラソンは人生に例えられたり、自分との戦いだ、と言われたりする。コースは平坦な道だったり、登り坂が続けば今度は急に下り坂になったりと、標高差の多いものだったりする。そんな事を思いつつ初挑戦の58kmを走っているのだが、走っても走っても次の給水所は見えずキリキリと音をたてている体の節々やすっかり乾燥してガサガサののどのせいで頭が真っ白になりかけている。周りを見渡せば、堂々としている木しかなくどこからかテレビでしか聞いたことのない鳥の鳴き声が聞こえる。いつかは終わるのだろう。まともに大自然を感じられない僕はこう考えるしかなかった。そう、いつかは何事も終わらせないといけない。例えばそれは楽しかった中学二年生だったり、がんばってきた部活だったり、そしてこのマラソンだったり。どんなに遠い所でも、いきたくない所でも、進んでいれば必ず着いてしまう。これがマラソンが人生とたとえられる理由のひとつだろう。

 ゴールもスタートも全員決められている。コースが長い人、短い人。山ばかりの人、陸上トラックの人。走るのが好きな人、嫌いな人、速い人、遅い人。けれども走る事に精一杯だから人生というこのコースを楽しめと言われても楽しんだつもりになる事しか出来ないだろう。だから少しペースを下げてみると色々な物が目に入る。だから僕はゆっくりとしたあの春の訪れが好きなのだ。夏でも秋でも冬でもいけないなんともいえないちょっとしたスタートが。

 給水所で水を飲むと水が食道を伝わり胃に流れていくのが分かった。ここからあと5km近く、つりっぱなしの足でこの冷えきった体を動かすのは僕が生きてきた中で一番きつい事だった。走った。歩いているのか走っているのか分からないスピードで走った。この5kmだけはどんなに足がつってもなぜか走れた。最後というものはあっけなく来てしまう。あと4km、あと3kmと数えているうちに突然あと500mでゴールなどというふざけた看板が目に入るのだ。

 閉じたまぶたを無理矢理こじ開けて入ってくる陽の光は僕の目をこがすように照りつける。まぶしさのあまり寝返りをうちたいのだが体が痛くて思いのままに動かせずじれったくなる。初の58km挑戦の次の日、僕は筋肉痛のため、一日中動けずにいた。

(中学部3年生 男子)
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