後輩には見せない顔がある

後輩には見せない顔がある
「ねえ、手伝ってよ、Tシャツ作り」
とEさんに冗談で言われました。Eさんとは違う競技であり、チームも違いました。だから手伝うことはできません。でも頑張っている人がいると、応援したくなります。
 教室で放課後や夜ブレイクに毎日のように他のチームもTシャツ作りを頑張っていました。私は今までTシャツ作りをしませんでした。同学年でも今まではTシャツ作りの手伝いをしている人は少なかったと思います。私はみんなを見て一歩ずつ上級生に近づいているなとしみじみ思いました。
 突然私のチームのH先輩が中三の教室に来て、
「今、暇?Tシャツ作り手伝ってくれない?」
と私とMさんに言いました。私はびっくりしましたがすぐ、
「はい暇です。手伝います。」
と言いました。私たちが手伝うことは「避球」という字をマジックペンで塗るということでした。私はクラスの人が、かわいいTシャツ作りをしていたのを見ていたので、「避球」という文字だけかかれたTシャツを見た時少しがっかりしました。でも、ドッヂボールには男子もいたので、しかたがないかなと思い返しました。
 ところが球技大会前日に先輩からTシャツが配られた時、かわいい蝶の絵がかかれていました。私は期待に応えてくれた先輩にお礼を言いたいと思いました。自分がもしTシャツ作りの中心の人になるなら、「わあ、すごい。さすが先輩」と呼ばれる人になりたいなと思いました。
 みんなと一緒に練習した時、先輩は練習で汗をかきながらTシャツ作りも頑張っていることに、三回目の球技大会で初めて気がつきました。来年からは高校生の仲間入りです。ちょっとずつ大人になっていくというのはつらさもあり、楽しさもあることを今年の球技大会で教わりました。
(中学部3年生 女子)