卒業式祝辞をご紹介します: 在英国日本大使館総領事 川村博司様。

卒業式祝辞をご紹介します: 在英国日本大使館総領事 川村博司様。
本日はみなさんご卒業おめでとうございます。また、保護者のみなさま、先生方、関係者のみなさま本当におめでとうございます。
思い起こすと、私は30年程前に高校を卒業し、当時の校長先生から卒業証書をもらい不安もありながらも期待と夢で胸がいっぱいだったことを覚えています。
その後、大学に入り一人暮らしを始めました。私が人生で最初に「立教英国学院」のお名前を聞いたのはその時に、「立教英国学院」出身の同級生がいたときです。はっきり言って本当にびっくりしました。その人は英語がすごく上手で、礼儀正しくて。立教英国学院ってどんな学校なんだろうと思い、その時から興味津々でした。卒業後、外務省に入りました。やはり、そこにも立教英国学院の卒業生がいました。立派で、頭も良いし、英語ができるし、礼儀正しかったことを覚えています。一度立教英国学院に行ってみたいなと思っていました。
実は本日、立教英国学院に初めて参りました。到着して車を降りてすぐ、生徒さんが私に挨拶をしてくれました。たまたまそこにいただけの人だと思いますが、案内をしてくれるのです。この人は礼儀正しく、親切だなと思いました。おそらく、立教英国学院でそういう教育をされているのだと思います。だからこそ社会で大いに活躍されている方が多くいらっしゃるのだなと先ほども改めて感じました。みなさんは、おそらく、高校卒業後、大学に行かれたり、社会に入られたりするのだと思いますが、先ほど須藤さんがおっしゃっていたように、立教英国学院のプライド、誇りを忘れないように、名前に恥じないように頑張ってもらいたいと思います。
先ほど申し上げた通り、私も30年程前に高校を卒業しましたが、当時は夢や希望でいっぱいでこれから頑張ろうという感じでした。高校卒業のみなさんもそういう思いでおられると思います。
今日は2つ申し上げたいと思います。
1つ目は、新しいものをつくる喜びをいつも忘れないでいてほしいということです。私は田舎の雪の多いところの小中高を卒業しました。特に小学生のとき雪が降って朝外に出ると雪で一面真っ白だったことを覚えています。子どもの頃、誰も足跡をつけていない雪に足跡をつけることが喜びでした。そういった新しいものを作る喜びは常に持っていたいと思います。今はみなさんの前に道はなく、みなさんの後ろにみなさんの通ってきた足跡がある、そんな状況だと思います。どっちへ行っても良い、右へ行っても左へ行っても直進してもいいのです。新しい道をつくる喜びを胸に刻んでいてほしいです。どちらに進んでも、最初に経験した驚き、喜びを忘れないで進んでほしいと思います。
2つ目は、新しいことにチャレンジするときに、「そりゃぁダメだ」「こんなの無理、不可能」と思わないでほしいのです。最近の話をすると、小保方さん。みなさんご存知だと思いますが、彼女はスタップ細胞というものを発見されました。簡単に言えばひとつの皮膚の細胞が他の細胞にならないというのが生物学の常識。彼女はそんなことはないと考え、刺激を与えることでこの細胞が皮膚ではないものにもなると発見しました。例えば大火事によって負傷してしまった皮膚もこれによって治療可能となるのです。最初は生物学の先生方に、「信じられない」「非常識だ」「生物学をばかにするな」と言われ、有名な生物学の雑誌への論文の掲載も拒否されました。彼女は当時誰にも信じてもらえなかったことが一番辛かったと言っています。でもそこで負けず、その研究を続け、デートの最中にまで研究のことを考えるくらいまで熱心に取り組んだそうです。
ここまですごくはないのですが、私も最近大使館で総領事として同じような経験をさせていただきました。最近の例で言いますと、イギリスの運転免許証への切り替えが、これまで、イギリスのウィンブルドンのオフィスでできましたが、このオフィスが閉鎖され、ここからだと2、3時間掛かる本部に行かなければならなくなりました。または、郵送での手続きが可能ですが、郵送での手続きをすれば、パスポートが2、3週間も戻って来ない状態となります。最初はイギリス政府が決めたことに何を言っても無駄だと思いました。しかし、「長期間、パスポートがない状態は困る」「何とかしてほしい」という声を何件かもらい、イギリス政府に交渉をしました。ウィンブルドンでの手続きができなくなったのは、国によっては偽造パスポートが使用されるので、しっかりと確認をしなければいけないということが理由だと分かりました。日本人には偽造なんてする人はいない、真面目にしっかりやってる人たちですからと説得し、最終的に、大使館で発行するパスポート所持証明書を用意することで、パスポートの郵送は不要となりました。3月中旬くらいからこの制度は適用されるので、メリットを感じてもらえることと思います。最初は無理だと思いましたが最終的には上手くいったという一つの例です。
最後になりましたが、改めまして本日は本当におめでとうございます。