第4回 校長教育コラム
人は人との生活の中で育つ
~全寮制教育が育む人間力~
保護者の方からよくいただく質問の一つに、「全寮制にはどのような意味があるのですか」というものがあります。確かに学習だけを考えるのであれば、授業を受けて家に帰る学校でも教育は成り立ちます。しかし立教英国学院が全寮制を大切にしているのは、人の成長は教室の中だけで完結するものではないと考えているからです。人は人との関わりの中で育ちます。
友人と語り合うこと。
時には意見がぶつかること。
誰かに助けられること。
誰かを支えること。
そうした日々の積み重ねが、人としての成長につながっていきます。
本校では、小学生から高校生までが一つの生活共同体の中で暮らしています。私はこの環境をしばしば「大きな家族」と表現します。年齢も経験も異なる子どもたちが、同じ屋根の下で生活する。その中で生徒たちは、自立するだけではなく、人と共に生きることを学んでいきます。親元を離れて初めて生活する生徒も少なくありません。
毎日当たり前のように用意されていた食事。
洗濯された衣服。
何気なくかけてもらっていた言葉。
寮生活を始めて初めて、生徒たちはそれまで保護者がどれほど多くの支えを与えてくれていたのかに気づきます。中学生、高校生という時期は、親子関係が難しくなる時期でもあります。しかし距離ができるからこそ見えてくるものもあります。
全寮制生活は親子の断絶ではありません。むしろ、お互いを一人の人間として見つめ直し、新しい親子関係を築いていく機会でもあります。
また、本校を支えているのは上級生だけではありません。同じ学年の仲間の存在も大きな支えとなります。
ホームシックになった時。
勉強に悩んだ時。
友人関係に悩んだ時。
同じ経験を共有する仲間がいることは大きな力になります。
寮生活は楽しいことばかりではありません。時には意見が対立することもあります。昼間は激しく口論した相手が、夜になると自分の部屋に戻れば隣のベッドで眠っている。そんなことも全寮制では珍しくありません。
逃げることはできません。だからこそ、生徒たちは学びます。
相手を変えることばかりを求めるのではなく、自分自身も歩み寄ること。
自分の考えを伝えること。
そして相手の考えにも耳を傾けること。
友人とは常に気が合う存在ではありません。
しかし、気が合わない相手とも共に生活し、互いを尊重しながら関係を築いていく力は、これからの社会で極めて重要な力です。
全寮制とは、究極の人間関係を学ぶ場なのです。
相手に合わせるだけではない。
自分の主張だけを通すのでもない。
相手の主張を受け入れながら、自分の主張も受け入れてもらう。
その経験を日々の生活の中で積み重ねていきます。
卒業生たちが社会で活躍している姿を見るたびに、私は寮生活の力を実感します。
企業で働くときも、社会の中で生きるときも、自分と同じ価値観の人ばかりに囲まれることはありません。年齢も背景も考え方も異なる人たちと協力し、一つの目標に向かって進んでいかなければなりません。立教英国学院の卒業生たちは、そのような環境に自然に適応していきます。なぜなら彼らは、小学生から高校生までが共に暮らす共同体の中で、多様な人々との関係を築く経験を積んできたからです。
全寮制教育の価値とは、単なる自立心を育てることではありません。人と共に生きる力を育てることです。
そして、その力こそが、世界のどこにいても、人と協力しながら未来を切り拓いていくための土台になるのです。
校長メッセージ
全寮制とは、自立を学ぶ場であると同時に、共に生きることを学ぶ場です。人との違いを受け入れ、自分の考えを伝え、共に歩む力。その力こそが、生徒たちの一生の財産になるのです。