国語科より:高校一年生 現代文、「境目」エッセイ集 (7)

国語科より:高校一年生 現代文、「境目」エッセイ集 (7)

高校一年生の第一学期「現代文」は、川上弘美さんの「境目」という随筆でスタートを切りました。様々な「境目」を例に挙げながら、さりげなく「境目」に対する考察や独自の考えを述べていた筆者。読解後の発展学習として、各自ペンネームを使って「オリジナリティー」を重視した600字程度の「随筆」を書くことにチャレンジしました。学期末に完成した「2018年度 高一エッセー集」の中から、いくつかの作品を10回に分けてご紹介します。

 


「甘い物」

〈ペンネーム〉平塚てふてふ

 私は甘い物が好きだ。友達と街を歩いていてもお菓子を見つけると立ち止まってしまう。そして名前を呼ばれてはっと思う。
私の日課は学校から帰って来たときにお菓子を食べることだった。それを済ませないと気がすまなかった。小さくてもいろいろな人が集まる学校で起こることは、全てが楽しいわけではない。しかし学校でどんなに嫌なことがあってもお菓子を食べれば忘れてしまう。一口で私を笑顔にしてくれるお菓子は、私にとって魔法の薬のようなものだった。確かにおいしかった。しかし、一人で食べると少し寂しくて物足りなさを感じてしまうときがあった。
今の学校に編入することが決まったとき、私はお菓子が食べられるかとても不安だった。四月になって学校が始まり、一週間が経った土曜日の放課後、私はワクワクしながらスクールショップに向かった。そしてその期待は裏切られなかった。一歩教室に入るとそこには、様々なお菓子がきれいに並べられていた。それはとても輝いて見え、私の胸は高鳴っていた。
次の日、教室で友達と話しているとふいにお菓子が食べたくなった。私は買ったお菓子の袋を丁寧に開けた。その瞬間はとても幸せなものだった。お菓子はとてもおいしかった。一口食べると、甘い味が広がって、体の隅々まで満してくれる。そのお菓子はいつもよりおいしく感じた。それは久しぶりに食べたからかもしれない。しかし前で楽しそうに笑っている友達を見て、理由はきっとそれだけではないのだろうと思った。