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2016年度入学始業礼拝 校長式辞




新入生の皆さん、入学おめでとうございます。そして在校生諸君、進学おめでとう。
昨年に続いて、今年もキャンパスの桜が満開で、入学式にふさわしい日となりました。

この学校は1972年、初代校長をつとめた縣康(あがたやすし)先生によって創設されました。世界で最初に海外にできた私立の全寮制日本人学校です。このあと新入生の皆さんにお渡しする胸のバッジや、今日の礼拝式文の左上に印刷されている校章には、この1972の数字が記されています。この数字には、一番最初に海外にできた私立の全寮制日本人学校である、という誇りがこめられていると思います。

学校の桜は、日本の後援会から寄附されたものですが、イギリスの植物検疫のため日本から苗木を送ることができず、苦労の末、オランダから苗木を輸入したそうです。キャンパスのあちこちに植樹した高さ数十センチだった小さな苗木が、毎年少しずつ成長し、何年もかけてやっと今のようにお花見ができるほどの大きさになりました。

44年前にこの学校がスタートしたときも、生徒は小学生19名のみの小さな学校でした。校舎は、いま女子寮になっている本館だけ、寮も教室も食堂も、すべて本館だけで生活していました。私と高橋先生は、今から39年前、1977年4月9日にこの学校に赴任したのですが、当時は高橋先生が本館3階のドミトリー8、私はドミトリー10に住んでいて、毎朝オールドキッチンから漂ってくるベーコンやソーセージの匂いで目を覚ましたものです。その後第4代校長の宇宿昌洋先生の時代に、在英の各企業や多くの方々のご支援を得て、食堂ホールや教室棟、体育館や図書館などが完成しました。そして昨年には、新しい女子寮が落成し、あわせて男子寮3階の改築や、自家発電施設と各建物をつなぐ地下ケーブルの工事、貯水タンクの設置など、創立40周年に際して計画した住環境とインフラの整備がすべて終了しました。今の高校3年生の中には、毎年夏になるたびに断水でシャワーを浴びられなくなったり、停電で寮が真っ暗になったり、といった経験をした人がまだ沢山いると思います。幸いこの1年間は長時間の停電も断水も経験していません。そのうちに、そんな生活が当たり前になってしまって、あの頃の苦労は忘れられてしまうのでしょう。

あの女子寮が完成したとき、私は、ああ「山が動く」、というのはこういうことだったのか、と思いました。今日は立教小学校から入学した生徒もいますが、私も小学校からずっと立教だったので、聖書を聞いて育ちました。聖書の中で、小学生の時にどうしても納得のいかなかったことがありました。それは、マタイによる福音書第17章にあるイエス様の言葉で、「もし、からし種一粒ほどの信仰があれば、この山に向かって、『ここから、あそこに移れ』と命じても、そのとおりになる。あなたがたにできないことは何もない。」という箇所です。小学生の私はここに引っかかって、友達と真剣に論争しました。この友達の名前は本橋君というのですが、いくらなんでも、山が動くもんか、どんなに信仰があったって山なんか動かせるはずがない、と私が言ったら、本橋君が言いました。これは、イエス様がずるいのだ。もし山が動かなかったら、それはお前の信仰がうすいせいだ、ということになる。そう言われてしまうと、自分の信仰に絶対の自信のある人なんかいないから、そうか、本当はちゃんと信仰があれば山を動かせるのだけど、自分はまだまだ信仰が薄いから動かせないんだな、ということになってしまうと。ちなみにこの本橋君は今は大学教授になっています。その頃からずっと引っかかっていたのですが、昨年、ようやく女子寮が完成したときに、つくづくああ本当に山は動くんだな、と思いました。

計画した当時、本館の女子寮は2段ベッドを使ってギュウ詰め状態、それなのに今の高校3年生の学年にはなぜか次々と女子の新入生が入ってくる。シャワーの水がすぐ出なくなる、お湯が出ない、雨漏りがする、壁が落ちた、天井が墜ちた、監督官庁からはたくさん改善命令が来る、だけどお金がない。新しい寮を建てるなど、まったく不可能に思えました。寄附金を集めようとすると海外の学校だから申請が必要だという、申請のためには何10ページもの書類を提出しなければならない、英語の書類はすべて日本語に翻訳すること、ようやく申請までこぎつけても却下されてまたやり直しになる。建築にはホーシャム市の認可が必要、この申請にまた何10ページもの書類を揃えなければならない、今度は逆に日本語の書類はすべて英語に翻訳すること、ようやく申請までこぎつけると、突然絶滅危惧種のコウモリがいるかもしれないので認可が出ないと言われる、コウモリの生態調査にまた何10ページ、コウモリ対策をしてやっと工事がスタートすると、資材が集まらないから工事ストップ、天気が悪いから中止、嵐で瓦が飛ぶからできない、人手が足りない、などなどなどなど、数々の障害を乗り越えてようやくあの女子寮が建ったとき、頭をよぎったのは、ああ山が動くとはこういうことだったんだな、という思いでした。

少し前に、テレビ番組で「仁」というドラマがありました。あの中に、「神は、耐えられないような試練に遭わせることはない、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道を備えていてくれる」という言葉が何度も出てきます。実はこれも聖書の言葉、コリントの信徒への手紙一の第10章にあります。色んなお役所からの無理難題、厖大な数の申請書類、毎日毎日空き時間に訳しても訳しても先が見えない翻訳の山を前にした時には、いつもこの言葉を思い浮かべていました。そして、最後にひとつ分かったことがあります。それは、神様は試練を乗り越えられるように道を用意してくれている、その道とは、実は人のことなんだ、ということです。壁にぶつかったとき、必ずどこかに助けてくれる人がいる、思いがけないところで、誰かが救いの手を差し伸べてくれる。建設のための寄附をお願いに、岡野先生や高橋先生と夏休みにあっちこっちの会社を回ったのですが、どこも不景気でほとんど協力をいただけない、そんな中で、沢山の卒業生や、かつてここで一緒に働いていた教職員の方がたが支援をしてくださいました。心の底から嬉しく思いました。今回の建設を通してそういう経験をたくさんすることができました。

君たちには、この学校が先輩たちをはじめとする、多くの人たちによって支えられていることを覚えておいてほしいと思います。そして、是非、君たちにもこの学校にいる間に小さくても良いからどんどん壁にぶつかってもらいたい、試練に遭って、それを乗り越える経験をしてもらいたいと思います。これからの寮生活や、勉強や、部活動、球技大会、ジャパニーズ・イブニング、オープンデイなどの様々な行事を通して、いろいろなところで解決すべき課題、人間関係の難しさ、乗り越えるべきたくさんの壁が君たちを待っているかもしれません。オープンデイでは展示本部というお役所仕事が大好きな先輩も待っています。勇気を持って何事にも挑戦していってほしいと思います。壁にぶつかったら、「神様は、耐えられないような試練に遭わせることはない、必ず道を用意していてくださる」、という言葉と、きっとその道とは、誰か助けてくれる人がいるという意味だ、ということを覚えておいてください。君たちの友人や、クラスメート、先輩や後輩や先生が、きっと話を聞いたり相談に乗ったり手を差し伸べてくれるはずです。

今、グローバル人材ということがよく言われます。グローバル人材とは何か、世界で活躍できる国際人とは何か。ただ英語ができればよいというものではない。英語は必要条件であって十分条件ではない。英語は手段であって目的ではない。でも必要なツールだから、立教でしっかり英語を勉強してください。今年から高校2年生の私立文系にはCritical Thinkingを必修にします。Critical Thinkingは、今、日本でスーパーグローバル大学に認定された大学が、これから導入しようとしている科目です。でも、英語ができるだけの半分外国人みたいな人ではダメだから、立教では日本史も古文もやります。しっかり勉強してもらいます。でもそれだけではまだグローバル人材にはなれない。これから世界で活躍していくのに何が必要かというと、色々な人とのコミュニケーション能力とか、様々な考え方の人たちと力を合わせて物事を進めていくリーダーシップ能力とか、結局すべては他の人との関わりあいになる。日本の若者が内向き指向だと言われます。海外に出たがらないというだけではなくて、リスクをおかしたがらない、安全指向である、居心地の良さを最優先にする。実はこれは自分に対する自信のなさ、人間関係に対する自信のなさから来ているのかもしれません。それを打破するには、勇気を持って何事にも挑戦すること、自分から壁にぶつかっていくこと、試練を乗り越える経験を積むこと、そのことが何かを成し遂げたという自信につながっていく。他者との交わりの経験を積むこと、それによって他人を見る目を持つ、人を信頼することを学ぶ、お互いに助け合うことを学ぶ、互いを尊重し、リスペクトすることを学ぶ。それが他者に対する自信、人間関係に対する自信につながっていく。それこそが、国際人として身につけなければならないコミュニケーション能力だとかリーダーシップ能力だとか、すべてのことの基本になると思います。

立教の寮には個室がありません。このことには意味があります。

そんな立教に、勇気を出して入学した新入生の皆さんは、もう既に、今この瞬間この入学式にいるということで、国際人としての第一歩を踏み出している、ということができると思います。自信を持って次の一歩を進んでいってください。
君たちのこれからの成長を祈って、本日の入学・始業礼拝式の式辞といたします。
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