忙しい寮生活の中で自分達だけで曲を作り上げた、最後の「合唱コンクール」

忙しい寮生活の中で自分達だけで曲を作り上げた、最後の「合唱コンクール」 忙しい寮生活の中で自分達だけで曲を作り上げた、最後の「合唱コンクール」 忙しい寮生活の中で自分達だけで曲を作り上げた、最後の「合唱コンクール」 忙しい寮生活の中で自分達だけで曲を作り上げた、最後の「合唱コンクール」
 独特なピアノの旋律がニューホールに流れはじめる。それに合わせてハーモニーを重ねていく。私のクラス、高2−1組がこの合唱コンクールに選んだのは「流浪の民」だ。ふるさとを離れ、故郷を想い旅をする民の心を描いた一曲。
 舞台に立つと、足は震えるし頭も真っ白だ。それでも最後の合唱コンクール、悔いのないように、と全力で歌った。
 練習を思い返すとたった二週間弱で本当にたくさんの事があった。
 オープンデーなどを経て、一年近く共に過ごしたクラスだが、言ってしまえば一度も団結して全力で何かをやり遂げた事がないのだ。団結力に欠けるクラスではあったが、楽譜が配られるとみんな楽しそうに自分のパートの音をとり始め、一時間もすると一日目、とは思えないほどの出来にまでなった。
 高三がいなくなってしまった今、来学期には本当の本当に最高学年になる、という大切な時期に果たしてみんなは練習に参加してくれるのか?私自身あまり乗り気ではなかったし、部活が忙しい人もたくさんいた。その結果、日に日に練習の出席率が減り、得に優勝をめざそうという雰囲気も薄れていった。
 それでも学級委員やクワイヤーの人達があきらめずに指導してくれて、決められた時間のできる範囲で練習をしていくうちにみんなで一つの曲をつくることに夢中になっていった。失礼な言い方かもしれないが、”団結力のないクラス”でも、やっぱり心のどこかでは”最後くらい…”という気持ちがあったのではないか、と私は思っている。
 諦めず”練習しよう”とみんなに呼びかけつづけてくれた人達がいたから、限られた時間の中でも楽しむ気持ちを忘れずみんなで練習したからこそ、自由曲優勝を勝ちとれたと思っている。総合優勝こそ逃したが、それでも本当に満足のいく合唱ができた。
 音楽の先生の指導もなくて、忙しい寮生活の中で自分達だけで曲を作り上げる、だなんて、かなりの無茶ぶりだと私は思うが、それでもしっかりと合唱コンクールを成し遂げることは本当にすごい、と思うし、教えられたこともたくさんあった。
 最後、と思うとなんだか寂しい気もするが、悔いなく楽しんで歌うことができて、本当によかった。
(高等部2年生 女子)