ポンコツ受験生

ポンコツ受験生
受験をするか悩み始めたのは高校2年の3学期で、人の意見に流され続けて気がつけば高校3年になっていた。受験をするのだろうと他人事のように思いながらも、両親の前ではついごまかしてしまう。良い大学に行きたいという思いと、失敗するのが怖いという思いの狭間で私は常にプライドと戦っていた。
私の人生を列車に例えるなら、それはもう快適で何不自由のない安全なものだったと思う。なぜなら今まで歩んできたレールは両親が選んでくれた道で、何があっても守ってくれるという保証があったからだ。もちろん歩む以上は後悔しないように努力してきたが、高校3年になって、時折何とも知れぬ恐怖に悩まされるようになった。私の目の前の安全だったレールがなくなっていく感覚だ。そして私はそれが何を意味するのかを知っている。これからの新たなレールを作っていくのはもう両親ではなく、自分であるということだ。決められたレールの上を安全に歩くことができた私はもういない。あるのは無限に散らばるレールのパーツと、選ぶ責任。既成ではなく未知なのだ。選びようによっては果てしない後悔に嘖まれる恐れもある。こう考える度、私は自己責任という言葉のあまりの重さにパーツを選べなくなってしまう。誰かが決めてくれればいいのに、と思ってしまうのだ。
そんな私に、小さな契機が訪れた。今までどの職業、大学・学部にも興味を持てなかった私に、「行きたい学部」が見えてきたのだ。ジェンダー感やLGBT、また様々な事柄における社会の反応や人々の考え方…。国語の授業中の雑談の一環だったが私にとって恋に落ちるような感覚だった。これだ、これを学びたい、と思ったのは初めてで、たまらなく嬉しかった。意思を失くした私にパーツを選ばせてくれたように思えた。
正直まだまだ断言できるほどしっかりとした進路を立てたわけではない。目指す先が高ければ高いほど失敗した時のことを考えてしまうことに変わりは無い。しかし高校3年になったことを考えると、今更怯えてもしょうがないと思った。初めて自分の意思だけで選んだ道。前向きに努力していきたいと思う。
(高等部3年生 女子)