H2・古文・授業レポート②

高校2年生の古典では、今学期「春はあけぼの〜」でお馴染みの『枕草子』を扱いました。古来より、日本には四季があり、人々は食べ物や行事、そして天候や植物の変化からなる季節の移ろいを楽しんできました。春夏秋冬の「をかし」を取り集めた「春はあけぼの」や、嵐の翌日の趣深い秋の情景を描いた「野分のまたの日」からは、清少納言の優れた観察力と豊かな感性がうかがえます。加えて、文中に散りばめられた様々な「うつくしさ」を形容する言葉からは、人間の感覚に寄り添う繊細な言葉や表現が古代の日本に根づいていたことを確認することができました。

授業の取り組みでは、四季折々の「をかし」をふまえて、生徒たちが「をかし」や「あはれ」と感じる物事を集めた「令和の枕草子」を作成し、鑑賞しました。住んでいる場所や実際の体験に基づいた生き生きとした表現に、共感する声も多く集まりました。今回は春と夏・秋と冬の2回に分けて、「令和の枕草子」より、いくつかの例をご紹介します。

〈秋〉

秋は栗。蒸して塩味をつけて素材の味を楽しむ。また、炊き込みご飯として炊くのもよし。
秋は金木犀。ほのかに香る甘い香りが良い。星のように鮮やかに咲いているのを眺めるのも良い。
秋はリューデスハイム。辺りが黄金色に染まった葡萄畑沿いの道を秋風に当たりながら散策するのは言うまでもない。また、ロープウェイに乗って一面に広がる葡萄畑や街の景色も風情がある。
秋は落ち葉。落ち葉を掃除するのは退屈なようで達成感があって良い。集めた後の落ち葉の山を思いっきり蹴飛ばして、散らせるのは幼いときに戻ったようで良い。
秋は文化祭準備。一人ひとりがポテンシャルを駆使してビッグな作品を作り上げようと総力を上げる姿はいとをかし。授業がない日々というのも新鮮でまたよし。

〈冬〉

冬は雪。辺り一面が銀世界に変わり、息を吐くと白くなるのは良い。また、まだ足跡もない真っ白なところを踏んで足跡をつける感触を楽しむのも良い。
冬は東北。特に雪。真っ白の世界の中、鉄道でガタンゴトンと駆け抜けていくときの爽快感がたまらない。
冬は深眠。いつ起きるかわからぬがいつまでも寝たい。

冬は朝。寒さで目覚めて、まだ少し暗い中を、行き先を決めず、赴くままに散歩するのはとても良い。また、寒さに負けないように厚着をするが、鼻先が冷たくなっていくのを感じて、帰りに温かいものを買うのも良い。
冬は夜。体の芯にしみる寒さの中、白くなった息が夜の暗闇に溶けていくのは趣深い。帰り道、閑散とした住宅街を歩くと、虚無感が体を取り巻いている感じがするのも、また良い。
冬は輝き。普段は地味なマツの木がカラフルに輝く、12月25日の町並みが良い。年を越すと真っ白な銀世界が輝く。それを見ている子供の目は、なおいっそう輝いているのが良い。
冬はクリスマス。イルミネーションを見ると心が踊る。ツリーの飾りつけをするのは楽しい。サンタを楽しみに待つのが良い。サンタと一緒に買い物に行くのも良い。

冬は白い息。凍える空気の中、哀愁を込めて深い息を吐く。歩くたびに流れ消えていくのがとても儚い。
冬は大掃除。一年の汚れとともに懐かしい思い出が発掘されていく。そのたびに逐一手を止め、家族と共に懐かしむのは趣がある。