秋晴れの高1アウティング。ガイドツアーにケム川パンティング、学都ケンブリッジを存分に堪能しました。

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前日は冴えない曇り空。雨も降る肌寒い日でした。
「なんか明日アウティングに行くって感じしないよね。」と生徒がポツリ。
でもアウティング当日は朝から快晴。
翌日はまた一日中激しい雨が降ったりやんだりだったので、この日はまさに奇跡的なアウティング日和でした。
高校1年生45名はこの秋晴れの一日をイギリスが誇る学都、ケンブリッジで過ごしました。
「2年前までは世界一の大学だったんですが… 今はアメリカのMITに抜かれてしまって第2位。でも勿論イギリスでは最高の大学です。」
昼食をそれぞれの班に分かれてとったあと、英語によるガイドツアーが始まりました。15人ずつ3つのグループに分かれてケンブリッジの街を回ります。
「イギリスにはもう一つ、Oで始まってDで終わる大学があるんだけどね、僕たちはここではその名前は口にしないんだ。ただ、『あっちの大学』と呼ぶだけでね。いいかい、君たち、このツアー中にその言葉を口にしたら即出て行ってもらうからね。」
いきなりハリーポッターで聞いたようなセリフで優しく語りかけるガイドさんは、イギリス紳士らしいちょっと皮肉な笑みを浮かべて言いました。
「よく、大学はどこにあるんですかって聞かれるんだけどね、ケンブリッジ大学なんてどこにもないんだよ。」
ちょっと驚いて真剣にガイドさんの次の言葉を待つ生徒たち。
「独立したカレッジが31あってね、その緩い結びつきがケンブリッジ大学なんて呼ばれたりするだけなんだ。」
この「31」という数字と、最初のカレッジが出来た「1209」年という数字はこの後幾度となく生徒達に質問され、その度に無事に答えた生徒はお褒めの言葉をもらい、今度は自分にその質問が来るのでは?違う数字を聞かれるかも…とちょっとしたスリルと緊張感を味わいながら街の中を進んでいきます。
「さぁ、みんな、こっちに来てこの芝の上に立ってくれるかな。」
路地裏の小さな教会の前にある数メートル四方ほどの芝の上に15人の生徒達が並ぶのを確認してからガイドさんが続けます。
「君たちが立っているこの芝が、ケンブリッジで普通の人が歩いていい唯一の芝生なんだよ。」
またもや意外な言葉に目を丸くする生徒達。
「どのカレッジにも広い芝生が広がっているけど、その芝の上を歩いていいのは『フェロー』と呼ばれる特別な教授たちだけなんだ。ここの芝生はカレッジには属していないから大丈夫というわけさ。そして、この小さな教会、どんな教会か知っている?ケンブリッジで一番古い建物だよ。ところで君、ケンブリッジにはカレッジはいくつあったっけ?」
「……31?」
「よく出来た!君がこのグループで一番頭がいいんじゃない?さぁ、じゃぁ、次のところに行こう。ついておいで!」
お話はそれぞれの箇所で、長くもなく、短くもなく小気味のいい調子で進むので生徒達の集中力もうまく続きます。ちょっと疲れてきた頃に間髪入れずに、「一番古いカレッジの創立は何年だったかな?そこの君?」とふられ、「1209年!」と元気に答えれば「いいねー、よくやった。君の方が良くできるなぁ。」と励まされてついつい次の話に気持が向かいます。
「カレッジに入学して最初に学生達がやることは何だと思う?」
キングスカレッジの有名なゴシック様式の教会がそびえる前で立ち止まるとガイドさんが生徒達にききました。
「酒だよ!パーティーさ!みんなぐてんぐてんになるほど飲んでね。その勢いで、ほらあの高い尖塔が見えるだろ、あの教会の先っぽだよ。あそこまで自転車を持って登ってそこに自転車を置いてきた学生がいるんだ!翌朝は大騒ぎでね。その自転車を降ろすのには数日もかかったそうだよ。やっと自転車を降ろした翌日の朝、今度はその隣の尖塔のてっぺんにまた別の自転車が引っかかっていたらしいよ。この教会の尖塔は全部で4本あるからね。その後どうなったかはもうわかるよね!」
かなり長い英語の説明でしたが、ちゃんと話についていっている生徒達は思わず大爆笑。ケンブリッジ大学と聞くとインテリの堅苦しいイメージが浮かびますが、ガイドさんのお話のおかげで妙な親近感すら湧いてきて、今度はどんな話が飛び出すのか皆興味津々でした。
かれこれ1時間を超えるガイドツアー。天気がいいせいか、ガイドさんが上手なのか、はたまた生徒達が頑張っているのか、なかなかいい調子でツアーの最終地点、名門トリニティーカレッジの正門前広場に着きました。
秋の気配が町を少しずつ包み始めていましたが、この入口に並ぶ木々の葉もきれいな黄色や橙に染まり、美しい「秋」を演出してくれていました。
「この建物の正面、ほら見えるだろ、あの真ん中のところにいる偉そうな人、誰だかわかるかな?」
「ヘンリー8世!」
クラスの先生方の手作りのしおりで予習してきた女子生徒が誇らしげに答えます。
「素晴らしい!流石だね。それでは、彼が右手に持っているもの、何だかわかるかね?」
「………短剣?」
今度は少し自信なさげな声でありふれた答を返すとガイドさんがニッコリと答えます。
「いいえ」
スティック!、杖!、ペン!、しゃもじ!!
「全部不正解。彼が握っているのは……   椅子の脚さ!」
「椅子の脚!?」
思わず聞き返す生徒達。流石に1時間半も集中して英語を聞いてきたせいか、耳もそろそろ疲れてきたのかも…
「その通り、『椅子の脚』さ。学生達のイタズラなんだ。もとに戻す度に翌朝になるとまた別の椅子の足が握られていてね。結局最後はカレッジの方も諦めて、今ではご覧の通り、ヘンリー8世さんは『椅子の脚』を握りながら訪れる人たちを迎えているって訳さ。 さぁ、それじゃぁ最後はこのトリニティカレッジの中に入るよ。」
誘われるように扉を抜けて一歩足を踏み入れた途端、めまいがするほどの眩しい光の世界が開けて広大な空間が広がりました。フェローという人達だけが歩けるという美しい芝がどこまでも広がり、その中央には大きな気品のある噴水が静かな音をたててキラキラと輝く飛沫を飛ばしていました…
雨の日の狭間の奇跡的な秋晴れのアウティング。忙しそうに学生達が自転車で行き交う街。遠足の子供達がゾロゾロと移動して行く風景。観光客を魅了する路上演奏。活気あふれるマーケット。色々な情景の中を通
り抜けながらユーモア溢れるガイドさんの話に耳を傾け、あれこれと想像を膨らませて歩いたケンブリッジの町。
夕暮れのケム川の上を底の平らなボートに乗ってゆったりと進みながらパンティングを満喫していると、そのボートを竿一本で操っていたケンブリッジの学生が生徒達に聞きました。
「どうだい、ケンブリッジは気に入ったかい?」
声を合わせて「Yeeeeee…s!!!」と答えた生徒達の笑顔がとっても印象的でした。