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立教特派員レポート

違う風景


朝、とても肌寒く感じて目が覚めた。朝日の昇りはじめた窓の外を見ると、雪が降っていた。
中欧では当たり前の景色だったが、その時の僕にとっては、この雪がとても特別なもののように思えた。
タイミングを逃しちゃダメだ。そう思った。なんのタイミングかもわからないまま着替えると、カメラを手に家を一人飛び出して行った。

僕は写真を撮るのが好きだ。別に趣味でも特別うまいわけでもないが、我流でそれなりに様になった写真を撮っている。カメラを持ち出したのも、そのためだ。
家を出るとすぐに旧市街が現れる。ファインダー越しに見えた景色は、いつもの街並みではないことにとても驚きを覚えた。

旅先では必ず僕はシャッターを切る。新しい物、新しい風景が広がっているからだ。その自分の見た風景を忘れないために、いつか思い出せるようにと僕はひたすらシャッターを切り続ける。
この日のブラチスラバにも、それがあった。見慣れた教会、劇場、広場、歩道まで、どれも自分にとって新しく感じられた。
何度も見たことがあるのに、何でもない町のはずなのに、僕は白銀に輝くその「何でもない町」に魅せられていた。

ペストの塔を凝ったアングルから撮っていたからだろうか、通りがかったおじさんが犬を連れて僕に寄ってくるなり「フォトグラファーかい?」と尋ねてきた。顔を見ればどう見ても学生のはずなのだが、その時の服装でそう見られたのかもしれない。自分が口を開く前に彼は間髪入れず「いいスポットがあるんだ。」と一言。僕は何も言わず彼の後をついていくことにした。

そこから5分。「ここだ。」と言うなり彼はいなくなってしまった。
そこはどこあろう、自分の家の裏にあるお城だった。このお城は山の頂上にあり町全体を見渡せる場所なのである。
いつものランニングコースなのに、なぜこの景色を見落としていたのだろう。
雪で衣替えをした町をファインダー越しに見ながら、目から涙がこぼれた。
それが寒さのためか、美しさのためかはわからない。だけれども、僕はまた一つ、この町の姿を見つけられた。
そのことが嬉しくて、ご飯も食べずにひたすらシャッターを切り続けていた。
メモリー残量がゼロになった時、やっと、ハッと我に返った。
時計の針は12時半を指していた。

(高等部2年生 男子)
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