立教英国学院

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立教生が綴る英国寮生活

静寂の空気を全て打ち破り、勝ちたい、というただ一つの最終目標を叶える瞬間。


「瞬間」

選手が芝を踏みしめた。ほんの数秒前の空気が消滅させられたかのような、静かな、それでも闘志に満ちた気迫が、その場一体に広がる。白い服がなおさら静寂を強調しているようだった。
大きく息を吸い込み、吐き出し、黄色いボールを力強く握った。1回毎に全ての運命を注ぎ込むように、力強く握った。
選手が、その腕を大きく、そしてゆっくり振り上げた。実際にゆっくり振り上げたのではない。張りつめた空気が私達にそう見せていただけであった。
振り上げた腕から、たった1球のボールが宙に浮いた。そのボールが上昇し、下降するまで1秒もない。しかし、長い。とてつもなく長いのだ。その一瞬は選手に何を与えているのだろうか。無心になるための時間、今までの努力を振り返る時間、闘争心を力に変える時間、きっと一人一人の選手が、一人一人別のことに時間を割くのだろう。
そのボールは、0.何秒後、振り下ろした腕に握られたラケットによって打ち出された。今までの静寂の空気を全て打ち破り、勝ちたい、というただ一つの最終目標を叶えるべく、凄い速さで空を切った。
その光景とともに選手の声も聞こえてきた。それはまるで緊張という感覚を捨て、今の全てをこの10数秒間に捧げるような、そんな試合を始める掛け声のように聞こえていた。

(高等部3年生 男子)

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