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立教特派員レポート

「千尋が迷い込んだ世界」〜九份、台湾


 奇妙な臭いの中、人混みにまぎれて汗をかきながら屋台の続く道を必死に歩いた。周りの人たちが何をしゃべっているのかも分からない。そこにいた私と母は、本当に『千と千尋の神隠し』に出てくる主人公・千尋が迷い込んだ世界にいるかのようだった。宮崎駿さんもこの場所から、あのミステリアスな世界を創り上げたというが、私たちは十分に納得できた。
 今回の夏休み、私と母は台湾に旅行に行った。やはり、その中でも一番面白かったのは『千と千尋の神隠し』の舞台になったとされる九份であった。九份は台北からバスで一時間ほど行った旧い街である。バスが着く頃、空はまだ明るかった。作品内で舞台になったのは夜の九份の姿だ。

 私と母は九份の街中にある、高台の中華料理屋さんに入った。しかしそこまで行くには、ものすごく急な階段を上らなくてはいけなかった。台湾は暑い上に、じめじめとしている。私と母はすでに汗だくになってしまった。
 階段を上っていく途中には屋台以外にも普通に家が並んでおり、しかも中に住んでいる人びとが丸見えだった。私だったらこんなに多くの人に見られながら暮らすのは耐えられないだろう、と思った。そして一つ、疑問に思った。ここの近くにはスーパーマーケットなどはないが、どのように暮らしているのだろう?屋台はあるが、生活必需品などを求めて何キロか離れた町に行かなくてはならないのか?そう思うと、私には到底できそうにない生活だった。しかし、おそらくここに住む彼らにも私たちの生活を見てそう思うこともあるのだろう、と考えたら、何とも言えなくなった。

 そうこうしているうちに、辺りは暗くなり多くのちょうちんの灯りがついた。いよいよ千尋が迷い込んだ世界だ。屋台に見たこともないようなものも売られている。奇妙な臭いを漂わせている正体は「臭豆腐」という文字通り、豆腐を発酵させてつくった臭いものだ。とにかくここには豚の顔や耳や腸詰めなど、日本や英国では見たことがないようなものがたくさんあった。そうしたものがミステリアスなあの世界を宮崎駿さんに想像させたのであろう。
 『千と千尋の神隠し』は今でも世界中の多くの人々に愛され続けている映画だ。その舞台となった九份も地元の人や観光客に愛され、にぎやかで活気のある場所だ。

 日本に帰ってきて、私と母は改めて『千と千尋の神隠し』を観た。やはり、九份に行く前とは一味違った。きっと九份に行ったことがない人にしか分からない面白さがあったのだろう。小さなことかもしれないが、私と母はなぜかそれをちょっと自慢したい気持ちになったのである。

(中学部3年生 女子)
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