「少年の日の思い出」語り手を変えて物語書き直しに挑戦!②〈国語科〉

「少年の日の思い出」語り手を変えて物語書き直しに挑戦!②〈国語科〉
中学部1年三学期の国語科では、「少年の日の思い出」という、ドイツ人作家へルマン・ヘッセの作品を学習しました。このお話は主人公の少年「僕」の視点でお話が進んで行きますが、主人公(僕)以外の視点になって物語を自分で作ってみよう!という学習をしました。それぞれが、僕の母親やエーミールという僕の友人になり、状況や気持ちがどうだったかを考え表現してみる。作者や主人公の気持ちを考えるだけでなく、本文には描かれていない登場人物の心情を想像することに挑戦しました。
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エーミールの視点から
(中学部1年生 女子)
 僕は冷淡に構え、以前、彼をただ軽蔑的に見つめていた。
 確かに、誰も手に入れていないクジャクヤママユをつぶされたのは、ショックだし、彼を殴りたいぐらいだが、つぶれたクジャクヤママユは、つぶれたままだし、ここで、僕が手を出したら、僕も悪いことになってしまう。
 だから、ここはがんばって気持ちを抑えよう。そしたら、僕の勝ちだ。
 僕のおもちゃや、ちょうの収集なんかもらっても、クジャクヤママユではないんだし、そんなものをもらっても、僕は満足しない。それに、第一、僕は許すつもりなんかないのだから、彼からそんなおのをもらったら、まるで僕が許したみたいになってしまうじゃないか。そんなのは嫌だ。
 彼は立ち去った。よし!僕の勝ちだ!
 クジャクヤママユなんか、もう1回見つければいいんだし、元々僕のちょうの収集は彼のちょうより勝っていた。足だってかけていないし、触角だって全てそろっている。それに対して、彼のちょうの収集じゃ僕のよりも全然下だ。
 今ごろ僕はきっと、親に怒られて泣いて、僕のクジャクヤママユを盗んだ事を後悔しているはず。
 僕が彼にとった態度は、正しかった。
 だって、僕の勝ちになったんだから。
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母の立場になって
(中学部1年生 男子)
 私は自分の子どもがこんなにも熱中できるものがあって、すばらしいと思った。
 しかし、熱中するのはいいが、私はもっとスポーツとか勉強に熱中してほしかった。だが、もう遅い。あそこまで熱中しているものを、今さらやめろなんて言えないと私は思った。
 それでも、私はあまりにもひどいと思った。なぜかというと、あの子はちょう採りに出かけると、学校の時間だろうが、お昼ご飯だろうが、もう、塔の時計が鳴っても私の声も何もかもが聞こえなくなってしまう。
 しかし、もうあの子はちょう集めをやっていない。あの事件以来・・・。
 その時あの子は12歳だった。
 あの子は、中庭の向こうに住んでいた先生の息子に青いコムラサキを見つけたので見せに行った。そうすると彼は、非の打ちどころがないという悪徳を持っていたらしく、それは子供として2倍も気味悪い性格だったらしい。そして、息子はこっぴどくひどい事を言われかえってきた。その後しばらくして、その子がめずらしいちょうを見つけたと言ったらしく、うちの子は行ってしまった。そして、家に帰ってくるとすぐさま私に話し始めた。どうやら、うちの子はめずらしいちょうを盗んだらしく、挙句の果てに壊してしまったらしい。
 その時から、うちの子はちょう集めをやっていない。
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エーミールの視点から
(中学部1年生 男子)
 僕は誰かに台無しにされたクジャクヤママユを展翅板の上にのせて、繕っている時に、隣の子がやって来た。その子は自分の部屋に入ってくるなり、
「僕がやった。」
と言った。
 僕は、それを聞くなり、その子を殴ろうとしたけれど、僕はやめた。そこで僕がその子を殴ったら、自分も悪くなってしまうからだ。
 僕はその子に
「そういう奴だったんだ。」
と言い、僕は自分の部屋から出て行き、庭へ出て、一人で考えこんだ。
 僕はもうその子を信用できなくなり、その子とは、学校でも、どこでも、家が近いけれど、喋らなくなった。
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母の視点から
(中学部1年生 男子)
 あの子ったら、最近ずっとチョウ収集にはまっちゃって、勉強もしないで、その分冬にやるならまだしも、ずっとチョウばかり眺めていて全くやらないんだから。このままじゃダメ人間になっちゃうわ、何かやめるキッカケでもあればいいんだけど・・・でも、そうそうないわよね。
 あら、このチョウ、見たことないわね。小さいころ1回見たコムラサキに似てるけど、青いわ。多分、珍しいのね。こういうのぐらい人に見せればいいのに。今度何か収集に必要な道具でも勝手あげようかしら。でも、何か熱中しすぎている気がするわ。そのうち過ちを犯さなければいいけど。
 あら今日はやけに早く食事を終えたと思ったら、すぐに出かけていったわ。何かあったのかしら。でも、どうせチョウなんでしょう。
 しばらく放っといた方がいいのかもしれないわね。
 「お母さん、僕、エーミールのクジャクヤママユを盗んで、その後、それを隠そうとしてつぶしちゃったよ。」
 ああ、ついにやってしまったのね。悲しいわ、でも今一番悲しみ、悔やんでいるのはこの子のはずよ。よし、
「お前は、エーミールのところへ行かなければなりません!そして、自分でそう言わなくてはなりません。お前の持っているもののうちから、どれかを埋め合わせにより抜いてもらうように申し出るのです。そして、許してもらうように頼まなければなりません。」
「今のうちでなければなりません。さあ、行きなさい。」
 帰ってきたわ。相当落ち込んでいるわ・・・そりゃそうよね。
「床にお入り」
もう同じ事は繰り返さないわよね。