読書感想文優秀作品:「星の王子様」を読んで

読書感想文優秀作品:「星の王子様」を読んで
 僕は大人でも子どもでもない。大人には子ども扱いされ、5歳のいとこも大学生のいとこもたまに大人扱いする。さしずめ「お兄さん」と言ったところだろうか。星の王子様を読んでいる途中も、僕は大人と子どもの中間だった。数字に執着して小惑星B612を検索してみたい、はたまた大人の考えがわからない王子さまに共感してみたい。
 大人は、僕よりもずっと沢山の今日や昨日を過ごしている。その中で出会った人の数も相当のものだろう。いろいろな人と出会っていくうちに、自分以外の人なしではいられなくなってしまうのではないだろうか。そのために、子どもの時に持っていた自分の世界が小さくなってしまったのではないだろうか。もちろん今の僕も、もっと子どもだった僕も他の人なしでは生きられない。しかし、今の僕には大人よりも他の人を気にしない自分の世界が多くあるように思う。
 大人は子どもを育てる時に、善悪や社会のルールを教えるのと同時に、評価を与える。誉めたり、叱ったりされた子どもは、一喜一憂して大人になっていく。他の人との関わりの中で他人と自分を比較したり、他人に称賛されたりして、自分を磨いていくのかもしれない。でも、結局その人はその人でしかなく、それ以上でも以下でもない。ボアに飲まれたゾウの絵は、作中の「僕」にとっての帽子ではない。もし人の目を気にして、帽子の絵として納得は本物ではないだろう。僕の考えは、他人の考えに関係なく、僕の考えでしかないのだ。人はいくら他者に近づこうとしても、孤独を捨てきれない。
 王子さまはそれを知っている。王子さまの世界は本当に簡単なものだ。美しい花が美しいのに理由はなく、そこから目を背ける理由もない。花弁やおしべやめしべがいくつあってどうだとかは、すごく後から付いてくるものなのだ。花は美しく咲くことができて、その美しさを認めたり、健やかに育つよう水をあげたりすることが僕には出来る。大人の考える他人との関わり方よりも、互いの関係は全く簡単だ。僕には僕にできることしかできないけれど、誰かのためにできることがあるのなら、そのことに感謝して力を尽くしたい。
(中学部3年 男子)