中学部3年 国語科『ことばの描写力』【第2回目】

中学部3年 国語科『ことばの描写力』【第2回目】
国語科の授業では、言葉で表現する難しさに挑戦してみました。「描写力を高める」ということを目標に、
① くるりくるりとねじれた、真っ白い、柔らかそうなソフトクリームを手にとって口に運び、口の中でとけてゆくまでの様子をくわしく、スローモーションのように描く。
② 夏の夕方ざぁーっと降ってきた雨が上がったあと、地面からもやもやっとたちのぼる匂いとその様子を目の前で見ているように描く。
③ 毛糸をくるっくるっと編んでゆく編み棒、そして指の動き、できあがってゆく様子をうまく描いてみる。
の三つのうち、一つ題材を選び書きました。どの作品も実際に目の前で繰り広げられるかのように、生き生きと描かれています。
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サクサクとしたコーンの上に、ひんやりと、白いミルクのようなバニラ。
 お店の人が、ゆっくりとうずまきをまくようにくるりくるりとのせていく。三回転。先っぽがちょんと細くとんがった。私は、先のところをぺろっとなめた。すると、舌の上でゆっくりバニラがとけていき、バニラの香が口の中でぱあっと広がっていった。それはまるで雪どけのような瞬間だった。
(中学部3年 女子)
 ばあちゃんが毛糸を編んでいる。編み棒は、優しく、ゆっくりと、まるで角の生えた象が戦っているようだった。毛糸は、おたまじゃくしがかえるに変わるように形を変えていく。おばあちゃんは、にっこりしながら編んでいる。気持ち良く、ふんわり空を飛んでいる鳥のように微笑んでいた。おばあちゃんの顔は、プレゼントを買ってもらった子供のようだった。おばあちゃん大好き。
(中学部3年 男子)
 夏の、生温かい空気の中で、ぎらぎらした太陽に焼かれた地面。
 ざぁーっと雨が降った。冷ましたいかのように降った。
 喉が渇いた人のように、乾燥しきった土は飲んでいく。十分後、またぎんぎらぎんの太陽が出た。土たちは、幸せそうに溜息をついた。そしてもやをゆっくりと上げていく。幸福感いっぱいの、懐かしいような匂いが、私を、草も木々たちをも包んでいった。
(中学部3年 女子)
 コーンを従えて、夏の太陽を受けて白く輝きを放つ「それ」は、空腹の僕を魅了するのに十分すぎるものだった。迷わず買った僕は受けとってからまず、あまり人のいない日なたに移動し、一口なめた。口の中に広がっていく乳製品独特の濃厚なコクと、ほどよく絡まる砂糖の甘み。そしてなにより、暑さを忘れさせる心地よい冷たさ。うまい。口の中でとろけた「それ」は、口内に余韻を残して、はかなく消えた。僕は「それ」、ソフトクリームに再び口を運んだ。
(中学部3年 男子)
 じめじめとした、湿った雨がサァッと止み、グランドに出ていったら空気はまだ生温かくて雨の匂いがしていた。そして、時間がたつにつれて、周囲の匂いはだんだんと変わっていった。雨の匂いが土の匂いと混ざっていき、辺りにはもやもやとした土のにおいが立ち込めた。それは、どろ団子を作った直後の手の匂いみたいな感じだった。やがて雨や湿り気は消えていき、グランドはいつもの通り乾いた砂の匂いに変わっていった。
(中学部3年 女子)