立教英国学院

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立教生が綴る英国寮生活

Z旗


満開の桜を見る度に、ああ去年はもう散り尽くしたあとだった、と感慨が胸に押し寄せる。花が咲いているせいか、春、新学年の始まりを身にしみて感じるのはわたしだけだろうか。そしてそう考えるとき、わたしは常に一年という時間の長さと短さを思い知るのだ。

一年前のわたしは文字通り右も左もわからなくて、新しい生活におろおろするばかりであった。それから、思いきり笑ったり泣いたりして日々を過ごし、自分でも気付かぬうちに大きく成長したことだろう。しかし、たくさんの新入生を前にして、一年前憧れた先輩になれているのかと自問すれば、その答は否かもしれない。見えるところも見えないところも、この特殊な環境での一年分、大人になれているのだろうか。少なくとも、春休みが始まった頃は、1ヶ月後の自分が負うであろう義務や責任を、自覚していなかった。

春休みに、横須賀に保存されている古い戦艦を観に行った。世界三大記念艦の一つに数えられる「三笠」は、日本海海戦における大勝利をもたらした帝国海軍の、自慢の軍艦であった。約百年前、露国のバルチック艦隊を前にして、連合艦隊の旗艦である「三笠」は信号旗を掲げる。Z旗とよばれるそれは、「皇國ノ興廃此の一戦ニアリ 各員一層奮励努力セヨ」という意味を持っていた。近代化の波に乗り、今まさにそこから振りおとされそうな極東の兵士たちの士気を、これほどまでに鼓舞した言葉があっただろうか。
この有名な信号文を改めて見たとき、わたしはこの言葉が、海軍の兵士たちのみならず、わたし自身にも向けられていることを悟った。

「皇國」はわたし自身、「各員」はわたしの心身すべての部分。そして「此の一戦」は高校二年生として過ごす一年を指す。グローバルでシビアな現代社会に足を踏み入れ、列強の仲間入りを果たした日本=わたしの将来は、この一年にかかっている。Z旗に、そういわれた気がした。この信号文は、大学受験を視野に入れ、学校を引っ張って行く学年を迎えるわたしに、「一層奮励努力」しろ、と喝を入れているのだ。やがて大人になったときに厳しい世の中で生き残るためには、今「此ノ一戦」を制せなければならない。組織の中心となって学校を動かし、社会的責任も大きくなる高校二年生は、大人という名の列強の列の後方に、並んでいる。わたしはこの信号を見て、その義務や果たすべき役割を、はっきり自覚した。

先学期、高野チャプレンも繰り返し仰った。人生を決めるのは学生時代の生き方だと。学生時代の努力や培った人間性が、その人を作るのだと。

満開の桜を背景に、今わたしの目の前には、Z旗が掲げられている。

(高等部2年生 女子)
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