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立教生が綴る英国寮生活

夏の風物詩


 七月下旬、母とミュージカルを見に行った。普段は一人で歩く道だが、母がいたので音楽は聞かず、話しながら歩いた。
家を出たばかりなのに、既に母の鼻の頭から雫が垂れていた。三十度を悠に超える猛暑日。日傘を差しても尚、全身から汗が吹き出た。

 駅まで徒歩二十分。その間母と私はとりとめのない話をしていた。暫くして、母が、
「ミンミンゼミがまた鳴き出したね。」
と独り言のように呟いた。その瞬間、それまで無意識の内にシャットアウトされていた蝉の声がすっと耳に入ってきた。ミンミンゼミは、夏場どこに行っても鳴いていて、小さい頃から聞きなれているはずだった。しかし、母の言葉を聞くまで、私は蝉の存在を忘れていた。毎日飽きもせずやかましく鳴いている蝉の声を、認識すらしていなかったのだ。
そう考えて、少し悲しくなった。夏の風物詩でもある蝉を忘れるほど、外の世界に目を向けていなかったことに気がついたからだ。出かける時はいつもイヤホンをして音楽を流し、日本特有の四季を好む繊細さを忘れていたのだろう。

 その日から私は歩く時にイヤホンを付けなくなった。勿論蝉は五月蝿く、現実逃避できない分更に暑さも増すのだが、このことが一つ、嬉しい体験を生んだ。

 八月八日、その日は猛暑日には変わらないが、暑さの中に少し涼しさがあるような気がした。
特にこれといった根拠もなかったが、後からテレビを見て、その日は秋分だったことを知った。秋分だからといって天候にもすぐに影響が出るわけではないが、目に見えない季節の移り変わりに気づけたことが何より嬉しかった。
日本人は古くから五感全てで、感覚的に四季の変わり目を感じ取っていたのだなと感じた。

 普段白い画面に支配されている生活をしていると、たまに聞こえる風鈴の音や、季節の変動にははっとさせられる。それはなんだか自然と対話できたようで気持ちが良い。iphoneに溢れた今の世界に生きる私にも、やはり昔ながらの感覚が備わっているのだと自覚すると共に、時には自然に身をまかせてリラックスすることが思わぬ喜びに繋がることがある、と強く感じた。

(高等部2年生 女子)
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