卒業式祝辞をご紹介します: 理事兼卒業生代表 8期生 須藤達哉様(欧州三井住友海上英国支店長)

卒業式祝辞をご紹介します: 理事兼卒業生代表 8期生 須藤達哉様(欧州三井住友海上英国支店長)
只今ご紹介に預かりました本校8期生で理事の須藤です。
本年度本校を卒業される生徒の人数は、小学校の部で3名、中学校の部で29名、そして高等学校の部で32名と伺っております。小学生と中学生そして高校生の卒業式を同時開催するのは本校創成期からの一貫した特徴でもありますが、年齢の異なる皆さんにどのようなお話をするのが良いか、とても悩みました。そこで私自身の小・中・高の卒業式がそれぞれどんな風であったかを思い出しながら、皆さんに対する私なりのメッセージを送りたいと思います。
その前に先日熱戦が繰り広げられたソチ冬季五輪の話を少しだけさせて下さい。ソチ冬季五輪が幕を閉じて数週間が経ちますが、今でも思い出すと目頭が熱くなる場面があります。それは女子フィギュアスケートの浅田真央選手のフリーの演技です。悲願の金メダル獲得に向けて臨んだショートプログラムでまさかの16位。順位が発表され呆然とする浅田選手の顔をテレビで見ながら、翌日のフリーはどんな結果になってしまうのか心配しましたが、逆境を乗り越え、完璧な演技をしてフリーの自己最高得点を獲得、見事六位入賞を果たしました。メダルこそとれませんでしたが、それ以上の感動と勇気を与えてくれました。浅田選手のフリーの演技を見たBBC の解説者も「That was a champion’s response from what happened last night. (まさに王者たるものの反撃だった)」と絶賛していました。失敗をバネに素晴らしい結果を出した浅田選手の精神力と意志の強さに深く感動したのと同時に、苦しい時だからこそ、決して逃げ出すことなく、頑張らなければならないことの大切さを、改めて教えられました。
さて、私の小・中・高の卒業式について簡単にお話を致しましょう。
 私が小学校を卒業したのは1980年。その年の夏にモスクワ五輪が開かれましたが、旧ソ連軍のアフガニスタン侵攻に抗議し、西側諸国の大半が五輪参加をボイコットした東西冷戦の色濃い時代でした。そんな中、私は川崎市多摩区の公立小学校を卒業しましたが、卒業式で校長先生から「君たちの青春が始まるのはまさにこれから」と言われたことを今でも覚えております。
次に、川崎市多摩区の公立中学校を卒業したのが1983年。その年千葉県浦安に東京ディズニーランドが開園し、多くの話題を呼びました。父の転勤でロンドンに行くことが決まった私にクラスメート全員で送別会を開いてくれて「イギリスはとても遠い場所にあるのでしょう?」 「ビートルズによろしく!」等々、当時まだ海外に行く人が少なかった時代を反映するような無邪気なコメントを沢山貰いながら、英国に向けて日本を出発したことを覚えています。
そして立教英国学院でのとても充実した高校3年間が終わり、本校を卒業したのが1986年。
日本はバブル期に突入、日本の輸出競争力が突出して日米間で貿易摩擦問題が過熱した時代。
私は2学期の終業礼拝後、大学受験のため本帰国したので卒業式には出席できませんでしたが、終業礼拝で3年間担任をして下さった東先生の感動的なスピーチを聞きながら号泣。終業礼拝後も楽しかった3年間の様々な思い出に浸りながらずっと泣いておりました。これまでの人生の中で恐らくあの日ほど多くの涙を流した日はなかったと思います。
 小・中・高それぞれの時代背景そして心に残っている印象は様々ですが、こうして自分が過ごしてきた昔の時代と今の時代を比べて思うのは、今の時代ほど世界がボーダーレス化し多様な人材が求められている時代は他にないということです。そしてこの傾向は今後ますます強まっていくものと予想します。今の世の中では「グローバル人材」の必要性が叫ばれております。この「グローバル人材」に関する公式の定義は存在しませんが、色々な文献を読んで整理してみると、恐らく次のような人物がそれに当たるように思われます。
1、異文化を理解でき
2、英語で自己表現ができ
3、世界を相手にリーダーシップを発揮でき
4、イノベーション(変革)を起こすことの出来る人物
言葉で言うのはとても簡単ですが、これら全てを備えた日本人はまだまだ数少ない状況です。
「明日からグローバル人材になるぞ」と言って、直ぐになれるものでも決してありません。
ただ間違いなく言えることは、本校にいる君たち全員が将来こうした人物になれるチャンスを十分に持っているということ、そしてそのような人物になるためには、今から努力していく必要があるということです。
そこで、4月以降も本校で学び続ける在校生諸君にお願いがあります。
本校で学ぶ君たちは、英国という社会の中で暮らし、英国人と接し、英国文化を毎日肌で感じることの出来る境遇にあります。是非この恵まれた環境を最大限に活かし、異文化に沢山触れて理解を深めて下さい。また、本校在学中に英語力をしっかりと習得するよう努めて下さい。日本で学ぶ生徒と比べて、君たちは遥かに手厚い英語教育を本校で受けております。是非その教育をしっかりと吸収し、確固たる実力を身につけて欲しいと思います。
そして、本校を卒業し4月から大学生となる高校3年生諸君には、次のことをお願いします。
1、本校での生活を一旦リセットし、気持ち新たに大学生活をスタートして下さい。君たちが思っている以上に本校での生活は密度の濃いもので、大学生活とは全く性質の異なるものです。もしかしたら「立教英国学院で過ごした高校生活の方が楽しかった。高校時代に戻りたい」と最初は思うかも知れません。それでも暫くの間は後ろを振り返らず、高校生活よりも更に充実した大学生活を送るぞ、という希望を持って前に向かって進んで下さい。
2、目標を掲げて大学4年間を過ごして下さい。大学に入れば、決まった時間に起床し食事をして床に就く、というような生活は無くなり、かなり自由な毎日が待っています。高校時代の規律正しい生活の反動から日々緩んだ生活を送ってしまうかも知れません。大学4年間を無駄に過ごさないためにも、この4年の間に成し遂げたいと思う目標を定め、その目標に向かって前進して下さい。勉強でもスポーツでも社会奉仕活動でも何でも結構です。大学を卒業した時、「自分はこれを成し遂げた!」と自信を持って言える何かを是非掴み取って下さい。
3、1番目にお願いしたことと少し矛盾するかも知れませんが、立教英国学院の卒業生であることの誇りとプライドを大切に毎日を過ごし
て下さい。君たちの日々の行為と言動がそのまま世間に映る本校に対する評価になるものと思い、是非とも本校の卒業生として恥ずかしくない行動を心掛けて欲しいと思います。
本校を卒業した後の日々を、どれだけ実り多いものとすることが出来るかどうかで、君たちが社会に出たその後の人生が大きく変わってくるものと思って下さい。そしてこれからの世界に向かって堂々と大きく羽ばたいて下さい。それが、本校でお世話になった諸先生方、そして今日まで君たちを大切に育てて下さったご両親に対する最高の恩返しになると確信しています。
君たちが立派に成長し、立教英国学院の輪を更に大きく広げていって頂けることを期待して、私のお祝いの言葉とさせて頂きます。ご卒業おめでとうございます。