高等部3年生 卒業生スピーチ

高等部3年生 卒業生スピーチ
 今日は立教英国学院の卒業式。やっと学校を離れられる、と思う人もいれば、学校を離れることに寂しさを感じる人もいるだろう。僕は寂しさを感じている。
 今日この日が来るまでは、本当にこの学校に居られるのが最後なのだろうかと、実感が湧かなかった。だが、今この場に立って卒業のスピーチをしていれば、嫌でも実感がわく。本当にこれで最後なのだと。
 僕が立教英国学院に入学したのは、中学2年生の時だった。全寮制の学校なんて初めてだし、なにより親元を離れて生活するなんて経験したことがなかった。
 そのため、当然緊張していた。学校につき最初に向かった教員室。教員室の椅子で座って待っていると、ある1人の先生がやってきた。その先生はなんともいえぬ威圧を放ち、さらに僕を緊張させた。そう、その先生こそが5年間も僕達のクラスの担任をして下さった、倉品先生だった。倉品先生と両親が話をしているのを聞いている自分。そして最後に先生は僕に向かって、「よろしくね」と言ってくれた。何故だか分からないが、僕はその言葉に安心し、緊張が少し薄れた気がした。だが、もちろん初めから立教生活がうまくいった訳ではなかった。ドミトリーでは友達とけんかしたり、わずか5日程でゲームが没収されたり、入ってきたとき10人しかいなかったクラスでは、女子と仲良くなれず、なんとなくクラスに馴染めないでいた。食事の席では、今でもそうなのだが、食べるのが遅くて周りの人に迷惑をかけていた。だが、立教は容赦ない。もはや、これは伝統なのかもしれないが、立教に入ってきた新入生は大抵元からいた人に嘘をつかれる。コンチネンタルブレックファースト、通称コンチでは、コンチに参加するためにコンチ券が必要だと言われ、追い返されそうになったこともあった。また、ラジオ体操一番乗りを1年続けると、表彰されると言われ、信じて1年間続けたこともあった。当然表彰なんてされなかった。
 そんな激動の立教生活を過ごすこと1年半。僕はすっかり学校に馴染んでいた。しかし、その頃僕に思いがけない事件が起きた。それは、生徒会長になりたいと思ったことだった。普通に考えたら、事件でもなんでもないのだが、人見知りで、恥ずかしがりやで、人前に出るのが極端に嫌いな僕からしたら、事件の他なんでもない。別に急になりたいと思った訳ではない。だからと言って、特別な理由があるわけでもなかった。ある一人の先輩と、ある一人の同級生に言われた一言が僕を変えさせたのだ。今思えば僕はその言葉を本気にするほど単純だったが、結果的に僕の生活は充実したものになった。
高校生になった僕は、クラスに20人もの新入生が入ってきたので、不安を感じていた。当然、不安を感じるのは新入生の方なのに、僕は自分が新しい環境に戸惑っているという錯覚を起こした。だが、少し経てば、今のクラスがとても居心地のいい場所になり、更に学校生活が充実した。その分、騒がしくもなり、よくいろんな先生に注意を受けるようになった。そんな騒がしいクラスで3年間。今日は全員揃っていないが、無事に卒業を迎えることが出来た。今思えば本当にここまで長かった。いつも学期の最初は緊張しながら学校に帰ってきて、久しぶりに友達に会うと少し気まずくて、でも気づいたらみんなでふざけていて盛り上がっていた。しかし、いつもの学校生活が始まると忙しく、朝起きたらベッドメイクをして、体操に行き、礼拝にも出る。授業が終わったと思ったら、放課後はたったの2時間。その間に運動したり、勉強したり、シャワーを浴びる。夕食が終わればすぐに自習が始まり、寝る時間すら決められている。そして同じような毎日が繰り返されていく。はっきりいって辛かった。でも、そんな毎日の中で誰かと話したり、一緒にふざけたり、笑ったりする時が沢山あった。当たり前のことかもしれないけど、僕はそんな当たり前の事が楽しくて、楽しくて、だから僕はこの学校での生活を最後まで遂げることが出来たのかもしれない。僕はそんな立教英国学院が心から大好きだ。
この学校に帰ってくる卒業生は必ずこう言う。
 「立教で出会った仲間はかけがえのないものだ」
 「立教での一日一日を大切に過ごしてください」と。
今になって僕はこの言葉が持つ大きな意味を知ることが出来た。
 最後に。1年を家族よりも一緒に、長く過ごす立教の先生方。迷惑を沢山かけたと思いますが、最後まで温かく見守って下さってありがとうございました。特に倉品先生は5年間本当にお世話になりました。
 お父さん、お母さん。僕をこの学校に入れてくれてありがとうございました。立教で得たものはきっと何にも代えられない大切な宝物です。
 そして、立教生のみんな。立教で出会った仲間はかけがえのないものですから大切にして下さい。そして一日一日を大切に過ごして下さい。今はその言葉の意味を知ることができなくてもいいです。立教を去るときに、「ああ、そういうことだったんだな」と、思えれば充分です。
 長くなりましたが、これでスピーチを終わりたいと思います。
 立教英国学院。本当に長い間お世話になりました。さようなら。そしてありがとう。