立教英国学院

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卒業式祝辞をご紹介します: 本校理事を勤める英国アシュフォード法律事務所、中田浩一郎様。





 2013年3月9日(土)に行われた2012年度立教英国学院卒業終業礼拝における私の来賓祝辞に関して、棟近稔校長先生より次号の学院通信のために要約を作成して欲しいとのご依頼がありましたので、以下のとおり要約を申し上げます。

1.まず、卒業生、在校生、先生方、卒業生の保護者の皆さま、その他ご来賓の皆様に、お忙しい中、卒業終業礼拝にご出席いただいたことへのお礼、卒業終業礼拝への祝辞と感謝の気持ちを申し上げました。その中でも、特に保護者の皆様に対して、長年の責任を果たされたことに対する感謝とお礼の気持をお伝えしました。私も、2人の娘を持つ父親として、それらのお気持ちを心から理解することができたからです。

2.私は、英国立教学院の理事であると同時に弁護士であるので、法律家というプロフェションの視点から、卒業生の皆さまになにか心に残るお話しをして差し上げたいと思い、以下のようないくつかの法律的なエピソードをお話ししました。

(1)ハムラビ法典について
この法典は、メソポタミア文明の繁栄の中で生み出された世界最古の法典のひとつであると言われています。応報刑主義を明確に記載した法典として有名であり、「目には目を、歯には歯を」という法格言で知られています。しかしながら、この法格言は、世間では、しばしば間違って伝えられている傾向があると思います。この法格言は、目を奪われたら、目を奪い返して良い、歯を奪われたら、歯を奪い返して良いというような復讐を容認するような法格言として理解されていることがありますが、それは間違いです。この法格言は、実は私たち法律家にとっては、世界で始めて「罪刑法定主義」というものをを明確に定めた法典として有名であり、「人の目を奪った罪人に対してその罪人の目を奪うこと以上の刑罰を課してはいけない、人の歯を奪った罪人からその人の歯を奪うこと以上の刑罰を課してはいけない」という法原則として知られています。これは、パリのルーブル博物館に行くと、本物を見ることができます。

(2)モーゼの十戒について
これは聖書の「出エジプト記」の中のひとつのエピソードとして有名だと思いますが、モーゼは、神との間に十の約束を交わしたと言われていますが、私たち法律家にとっては、西洋社会における「契約」というものの重要性を理解する手がかりとなる、とても重要なエピソードなのです。

(3)マグナカルタ(大憲章)について
これは、1215年に英国において、民衆が始めて国王に一定の民衆の権利というものを認めさせた憲章として有名です。それ以前の民衆は、国王の所有物のようなものであり、国王の意のまま支配される傾向がありました。マグナカルタはこのような王の支配の在り方に民衆が初めて異議を唱え、「法の支配」というものを国王に認めさせ、国王と民衆の間に契約を成立させた記念碑として有名です。この年号を覚える時は、「人に以後(1215)示す大憲章」と覚えると覚えやすいと思います。マグナカルタは、英国図書館 (British Library)で、その原本を見ることができます。ぜひ一度ご覧になってください。

(4)電気は「財物」として窃盗の対象になるか?
これは、日本で実際に起こった事件です。日本に電気というものが普及し始めて間もないころ、隣人の電気コードに、自分の家の電気コードを繋いで、無断で電気を使用した人がおりました。これは窃盗になるか?ということが裁判で争われました。なぜならば、窃盗は、「財物」=「物」を盗んだ人に成立する犯罪であり、「電気」は果たして「物」と言えるか?ということが法律的な問題になったからです。常識的に考えれば、やはり人の物を無断で使用したのだから、「窃盗」を認めて良いような気もします。しかしながら、一方で、これを安易に認めてしまうと、法の裁きというものが恣意に流れて、前述のハムラビ法典のところで申し上げた「罪刑法定主義」というものを蔑ろにすることにもなりかねないのです。この事件では、裁判所は、最終的に「財物」であると解釈をして窃盗の成立を認めました。「罪刑法定主義」というものが軽視されると、人類が歴史上に犯した重大な過ちである「魔女狩り」や「ユダヤ人狩り」のような悲しい事件が起きる可能性があるのです。ビクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」という小説や劇もこのようなテーマを扱った物語であり、飢えてたったひとつのパンを盗んだ少年が一生その罪を負って生きなければならなかった悲劇を扱っています。この有名な劇は、現在ロンドンのピカデリーの近くの劇場で、ミュージカルとしてみることができます。ぜひご覧になってみて下さい。

3.渡辺洋三著「法というものの考え方」
私は、この本を読んで弁護士になることを志したとも言える、私の人生にとっては、記念碑とも言える本です。岩波新書で読むことができます。「法律は社会を明確に規律しなければ社会正義を守ることはできない。しかしながら、同時に、社会の常識に適ったものでなければ人々の幸せを守ることはできない。時に、このような二律背反の使命を負っている。」と言っています。これを法律用語では、「法律的な安定性」と「具体的な妥当性」の調和点を探す作業と言います。このような調和点を探すことができる能力を「リーガル・マインド」と言い、法律家にとって大切な能力です。良い本だと思います。一度読んでみてください。

4.最後に、なにか人の役に立つようなことをしないと社会の一員として生きていくことは難しいと思います。どのような職業でも良いと思います。皆さんが、ご自分の好きな仕事を通じて社会に貢献できるような人になることを祈念して私の祝辞を終ります。皆さんが幸せになれますように。そして、世界の人々が幸せになれますように。皆で協力をして生きていきましょう。ご卒業おめでとうございます。

立教英国学院理事
 アシュフォード法律事務所パートナー

弁護士 中田 浩一郎
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